2014.03.07
 町田市で不動産業を営んでいる友人がいます。ちょうど我々の息子たちと同じ年齢の男の子が3人いて、小さい頃から自然に触れさせたいと思っていました。そこで私財を投じてかつての山梨県北巨摩郡白州町(現・北杜市)の甲斐駒ケ岳の中腹の山林を購入、山小屋を2棟建設します。建設と言っても、土台造りから荷揚げ、建築まで、すべて志を同じくする仲間がボランティアで行いました。

 わたしたちにとって、特に子どもたちにとってこの山小屋は天国でした。トイレは地面に穴を掘っただけのもの、水も数百メートル離れたところからくんでこなければなりません。しかし、春の連休にはタラノメなどの山菜採り、夏休みは登山やスカウトの訓練、秋はきのこ狩りの拠点として、多くの仲間の集合場所になりました。

 さて、この季節になると、山小屋を訪れた1人の若者のことを思い出します。中学校で我が家の3番目の息子と一緒のクラスでした。他の生徒と比べて大柄なうえに乱暴で、すでに入学時から問題を起こしていました。担任の先生を殴って骨折させ、新聞沙汰になったこともあります。

 そんな中で、息子から思いもよらない提案がありました。「彼を山小屋に連れて行こうよ」。わたしは、彼のような子はトイレも水もない不自由な山小屋など絶対に行かないだろうと思っていました。でも驚いたことに、行くと言ってくれました。

 彼と息子とわたしの、3人だけの1泊2日の山小屋です。彼は酒やタバコなど非行を繰り返していましたが、山の上では何もできません。食事も自分たちで作らなければなりません。でも、時折見せる笑顔に、彼の若者としての純粋な心を見ることができました。

 翌日は近くの日向山への登山を計画しました。日向山は標高1,660メートル。頂上までは上りの連続です。日頃不規則な生活をしている彼には無理かもしれないと思ったのですが、何とか頂上まで登り切ることができました。

 残念ながらその後も彼は暴力事件を繰り返し、ほとんど学校には来なくなりました。でも卒業式の日、彼はやって来ました。式が終わって卒業生を送り出すために他の親御さんと一緒に並んでいると、小さな花束を持ってわたしのところに近付いて来ました。そして、「おじさん、ありがとうございました」と言ってその花束を渡してくれました。

 彼はもうこの世にいません。結婚後、若くして病死したと聞きました。それからしばらく経ったある時、家内が市役所で彼と同じ苗字の、赤ちゃんを抱いた美しい女性を見かけました。彼の奥さんと子どもです。

 あのわずか2日間の自然との触れ合いが、彼の中でどれほどの意味を持ったのかは分かりません。でも彼自身は、その短い人生を幸せに締めくくってくれたのだろうと考えています。テレビや雑誌で山の映像を見るたびに彼のことを思い出します。
by ohkimakoto | 2014-03-07 00:00 | 2014年分
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